2024/04/19

わかるとは?

 我々は通常、わかるという言葉を「わかった、わかった」などと当たり前に使っている。しかし、わかるとはどういう状況になればそう言えるのか?それをきちんと説明することは意外に難しい。それは万国共通かもしれない。しかし、日本語の場合は「わかる」という言葉は示唆的である。それは「分けることが出来る」という状況から来ているという説がある。つまり、この説では、わかったこととそれ以外のものとの違いを説明できるかどうかということになる。

さて、この本の著者のエドワーズは、「もしあなたが何かを本当に理解したいのなら、『どうやってあなたはわかるのか?』という基本的な問いを行わなければならない」と述べている。

もちろん、あなたは、わかったと言える根拠をまず述べるだろう。しかし次々に問い続けると、その根拠は何か?かを考えるようになる。もしそれが科学的な問いである場合には、測定器の誤差、測定対象のサンプリング手法、データの統計分析法などに注意を払うようになる。これは、エドワーズによると「どうやってあなたはわかるのか? 」である。

また、それは誰がその結果を集めたのか? なぜあなたはそれを証拠と見なしたのか? どこでそれが根拠と言える権限を得ているのか?ということが問題となる。これをエドワーズは、『どうやってあなたはわかるのか? 』ということになると述べている。

さらに、最後にそれらがどのようにして大勢に証拠として認められる、つまり人類の知として認められるのか?が問いとなる。これは、「どうやってあなたはわかるのか?」となる。この先は、デカルトのようにさらに突き詰める人もあれば、むしろ世間の権威に答えを頼る人も出てくるかもしれない。


 いずれにしても、気候変動をわかろうとする場合には、その前の気候がどうであったを知って、それと現在とを比較することが必要となる。しかも気候変動はグローバルな問題であるので、グローバルなデータが必要となる。それもできるだけ過去の信頼できるデータが必要である。

しかし、各地の観測データがあったとしても、どの地域でどのくらい異常なのかについてをどうやって知ることができるのだろうか? 観測データを見ればわかるのだろうか? 地球上で観測データがある地点は偏っており、データがある期間も地点によってばらばらである。それでは、どういうデータがどのくらいの地域代表性を持って、どのくらいの期間あれば、気候変動の把握が可能なのだろうか?これらは認識論に関わる問題でもある。

現代では、地球温暖化の問題は一部の科学者や政治家の問題ではなく、それをはるかに超えている。世界で数十億人が地球温暖化について知っており、それに何らかの形で関心を持っている。これらの世界中の多くの人々は、どういう経緯で地球温暖化という気候変動に関心を持つようになったのだろうか?

これらの問いの答えの始まりとなったのが、19世紀の英国の評論家ラスキンが唱えた『A Vast Machine(巨大な機構)』である。この言葉は、この本の原題ともなっており、この本は、認識論や社会制度、技術論などさまざまな角度から分析してこの問いに答えながら、地球温暖化を人類が本当に理解するために必要な知識を挙げ、必要な概念を提唱している。

 

19世紀の英国の評論家ジョン・ラスキン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%B3#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:John_Ruskin.jpg